2022-10-10

欧州の寒い冬、高い燃料価格

環球時報記者、ヤン・シェン
同、リウ・カイユ
(2022年10月9日)

欧州諸国は厳しい冬を迎える準備をしている。専門家によれば、ロシア・ウクライナ危機の深刻化やノルドストリーム・パイプラインの爆発事故で、エネルギー危機の悪化が予想される。米国はエネルギー価格の高騰を利用して欧州経済を弱体化させ、製造業を欧州大陸から追い出そうとしている。欧州連合(EU)の首脳たちは欧米関係の将来について慎重に検討する必要があり、EUは連帯と独立した政策決定を維持してこそ、欧州大陸の持続可能な平和と発展を確保することができるという。

中国のアナリストによれば、一部のEU諸国、とくに経済主要国が米国から極端に高い価格でエネルギーを購入するのは、地政学的な危機によって強いられた状況である。市場原理に従った通常のビジネス取引ではなく、持続不可能だ。将来、EU諸国は米国と過度に緊密につながるより、エネルギー依存を他国に分散する努力を払うだろうという。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は10月6日、欧州諸国はアジア経済圏と協力し、米国とノルウェーがガスの価格販売を引き下げ、強い友好関係を示すよう求めるべきだと述べた。マクロンは同日パリで開かれた企業家会議で、ロシアを制裁する国々は「自由の戦士」として団結しているものの、化石燃料の生産や消費をめぐっては分裂しているという。

「偉大な友情の精神で、我々は米国やノルウェーの友人に言うだろう。あなたはすばらしい、私たちにエネルギーとガスを供給してくれている。しかし、あまり長く続けられないのは、あなたの産業に4倍の販売価格を支払うことだ」。マクロンは言った。「それは必ずしも友情を意味しない」

フランスは、とくに主要七カ国(G7)にこの問題を提起するつもりだという。マクロン大統領は、今は本当のガス市場が存在しないと述べ、主要国はこれを「理にかなった」価格帯に戻すよう努力すべきだと付け加えた。

中国人民大学国際問題研究所の王義偉所長が10月9日、環球時報(グローバル・タイムズ)に語ったところによれば、エネルギー価格の高騰は間違いなく西側諸国を分裂させるだろう。なぜなら、米国のエネルギー企業が「戦争を利用して金持ちに」なろうとしているのはきわめて明白であり、価格高騰は製造業のコストを上げ、EU経済に直接打撃を与えるからだ。

「今後ウクライナ危機の悪化に伴い、製造業が欧州を脱出してアジアや米国に移っていき、欧州経済は空洞化する。今は政府の補助金で庶民の日常生活に大きな変化はないが、長期では多額の借金と国力の低下が、欧州大陸の人々の生活に影響を及ぼすだろう」。王はこう指摘した。

今のところ、EUがこの危機を止めるためにできることはあまりない。EUのエリートたちも、ロシア・ウクライナ危機を利用し、経済で最大の競争相手であるEUを弱体化させる米国の戦略をはっきり理解している、とアナリストは指摘する。EUは内部分裂のせいで、一丸となり強力で強固なパワーとして危機に対処することができないという。

エネルギー危機は現在、ますます多くのEU主要国に影響を及ぼしている。イタリアではこの冬、セントラルヒーティングが制限される。ウクライナ危機に端を発した欧州のガス供給不足に対処する最新の国となる。報道によると、政府の新しい法令により、イタリアの建物ではセントラルヒーティングを使用できない期間が15日間延長されることになった。

ロイター通信の報道によると、(エネルギー危機対策の)提案にはガス価格に上限を設けることが含まれており、EU諸国の大多数が支持しているが、デンマーク、ドイツ、オランダは、経済に必要なガスの購入が困難になるうえ、消費を抑える意欲が失われると懸念し、反対しているという。

スペインのテレサ・リベラ・エネルギー相はロイターの取材に対し、ガス上限規制の反対派は、欧州が「災害」に直面していることを受け入れる必要があると述べた。

中国国際問題研究所欧州研究部の崔鴻健部長が10月9日、環球時報に述べたところによると、EUはすでに危機の代償を払っている。なぜなら、厳しい地政学的問題を前に、独自に問題を解決する能力がなく、米国に頼らざるをえないからだ。EUは経済上の損失を払うべき代償とみるかもしれないという。

「しかしEUはその代償をできるだけ抑えたい。EU主要国はロシアを信用していないが、米国も信用していない。トランプ大統領の退任後はとくにそうだ。EUは米国が欧州との関係を現実的に処理することに気づいているし、米国は覇権が低下しているから、ますます信頼できなくなりつつある。このため、EUはアフリカや中東にエネルギー供給元を分散しようとしている」。崔はこう指摘する。

アナリストによれば、欧州市場の需要と中国の生産能力を考慮すると、欧州と中国は新エネルギー分野で協力の可能性が大きい。だがEUは加盟国によってそうした協力を模索する動機は異なるし、対中関係を扱う姿勢も異なる。EUは他の覇権国の影響を受けず、独立した政策決定と連帯を保つことが重要である。

(次より抄訳)
EU complains high energy bills, to endure cold winter - Global Times [LINK]

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