2022-10-12

すべてを機密解除せよ!

麗澤大学准教授、ジェイソン・モーガン
(2022年9月19日)

「カネの動きを追え」。これは国家に不信感を持つ人々の間でよく使われる合言葉だ。政治家や政府機関が本当に何をしようとしているのかを知りたければ、政府関係者の主張に耳を傾けるのをやめ、誰が政府関係者にカネを払って発言させているのかに注目するというのが、健全な常識だ。

しかし、カネを追うには限界がある。一つには、カネはしばしば回りまわって有権者のポケットに入るからである。有権者は汚職を嫌うが、自分が利益を得る場合は別なのだ。

もう一つの限界は、国家がカネの供給を支配していることだ。自由主義者(リバタリアン)にとって、カネの動きを追うことは、少なくとも国家の規模を縮小することにつながるはずだし、私もできれば国家を完全になくしたい。しかし、国家は通貨偽造を独占している。

だから、いくらカネを追いかけても、国家権力の二つの心臓のどちらかにたどり着くことはない。ただひたすらカネの後を追い続け、国家権力の腐敗のもう一つの原動力にたどり着くことはできない。

今こそ、自由主義者が国家権力のもう一つの心臓である「情報」に焦点を移す好機だ。米連邦政府と、連邦政府が平気で法律を破ることを可能にするためだけに存在する「法執行」機関は、少なくともカネと同じくらい、情報に依存している。

8月上旬、トランプ前大統領のフロリダ州の私邸に連邦捜査局(FBI)が踏み込んだのは、現金ではなく、書類を探すためだった。トランプは大統領としてその書類の機密指定を解除する権限があり、規則に従い解除したと主張している。しかしFBI内部の情報筋によれば、FBIがその書類を欲しがった本当の理由は、機密文書だからではなく、FBIがトランプに行った「クロスファイア・ハリケーン作戦」(ロシア疑惑捜査)の秘密が明らかになるからだという。

カネを盗むことは、政府の日常業務だ。政治家が税金で市民からカネを盗み、賄賂やリベートでまた盗むという日常業務に対し、FBIは家宅捜索をしない。家宅捜索をするのは、誰かがFBIにとって危険な情報を持っているときだ。自由を奪う国家の真の活力源は、カネではなく情報なのだ。

したがって、次期大統領が就任初日にしなければならないことは明らかである。機密をすべて解除するのだ。すべての連邦文書の機密を例外なく解除し、すべての省庁の資料を米国民に開放するのである。機密扱いを解除することで、国家による情報の独占を終わらせることができる。事実上、国家を終わらせることになる。ここがポイントだ。次の大統領は、最後の大統領になる覚悟をしなければならない。

私たちは、人間の自由と国家の専制のどちらを選ぶかという瀬戸際に立たされている。どちらかが倒れなければならないが、私は国家の専制に倒れてもらいたい。国家を終わらせる唯一の平和な方法は、国家が国民を恐怖に陥れ、服従させるための糧となる、あらゆる機密を解除することだ。

「しかし機密指定をすべて解除すると、海外での政府活動が危うくなる!」と国家擁護派は叫ぶだろう。望むところだ。「軍事任務が危うくなる!」。それも望むところだ。中央情報局(CIA)、軍、FBIといった組織は、単に政府が米国民を専制支配することを可能にするだけである。「しかし機密解除は中国、ロシア、イラン、その他外国勢力を助けるだけだ!」。 最近確認したところでは、私の財産を盗み、同胞の米国人をテロリストに仕立てるためにナチスまがいの秘密警察を送り込んだのは、米政府だった。だから今、イラン、中国、ロシアのことを特段心配していない。

専制政治はカネを求める。つまり、米国人から盗んだカネを政治家やその取り巻き、支援者のポケットに入れる。しかしカネ以上に必要なのは、情報、秘密、大量のデータ、そのデータを見る特権である。「機密取扱資格」は、国家関係者が地位・階級を示すため身にまとう、衣服や王冠など装飾品の現代版だ。しかし私の機密取扱資格は、米国に生まれながらにして持つ権利である。国家と国民の関係を正す唯一の方法は、情報を本来あるべき場所に戻すことだ。

国家はカネを支配している。しかし情報を独占することはないし、できない。国家に情報の独占をやめさせれば、国家は終わる。

すべてを機密解除させよう。あとは成り行きに任せて。

(次より抄訳)
Declassify Everything! | Mises Wire [LINK]

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