2022-10-24

中央銀行デジタル通貨は自由に反する

ケイトー研究所、ノーバート・ミシェル
(2022年7月18日)

元国際通貨基金(IMF)職員のエスワール・プラサド氏は最近のインタビューで、新著『お金の未来——デジタル革命が通貨と金融をどう変えるか』について語った。当然ながら、中央銀行デジタル通貨(CBDC)が話題になった。

現在、コーネル大学の貿易政策・経済学教授であるプラサド氏は、CBDCが金融政策に与える影響について、率直な評価を下した。

CBDCは金融政策に新たな機会をもたらすと認識すべきです。もし私たちが皆、現金の代わりに CBDC の口座を持っていたら、理論上は CBDC の口座の残高を減らすだけでマイナス金利を実施することができるかもしれません。ヘリコプターでの資金投下を行うことも非常に容易になります。もしすべての人がCBDC口座を持っていれば、簡単に口座の残高を増やすことができます。

プラサド氏の「ヘリコプターマネー」はインタビュー記事のタイトルにもなっているが、CBDCのヘリコプターマネーの裏側に注目しなければならない。マイナス金利を実施するために、CBDCの口座残高を減らすという点だ。

言い換えれば、中央銀行は金融政策を行うために、人々の口座からお金を取り上げるのである。

もちろん、単なる脅しでこと足りる可能性もある。例えば、米連邦準備理事会(FRB)の考えでは需要が不足しており、人々はもっと消費すべきだという場合、お金を取り上げるという単なる脅しで、人々はお金を使うようになるかもしれない。しかし、それは本当の自由社会ではない。

根本的に、この金融政策の「すばらしい新世界」は、政府が「あなたのお金は、本当はあなたのお金ではない」と言っているに等しい。財産権は、「公共の利益」と「国民経済の管理」の必要とやらに従属させられている。

プラサド氏は、この根本的な問題をあまり議論していない。その代わりに、中央銀行のヘリコプター散布が中央銀行の独立性にどう影響するかに焦点を当てている。彼はこう警告している。

リスクはあります。なぜならヘリコプターマネーは一面において実質上、財政政策であり、もし中央銀行が財政政策の実施に関して政府の代理人とみなされ始めたら、中央銀行の独立性にリスクが生じ、最後はあまり良くないことになるかもしれません。

もちろん、中央銀行の独立性のリスクやヘリコプターマネーが財政政策であることについては、プラサド氏の言うとおりだ。しかし、中央銀行はすでに政府財政の代理人だ。例えば、FRBは米国債の市場を支えており、現在、国民が持つ連邦債残高の約27%を保有している(2020年5月の21%から上昇)。

財政政策と金融政策の融合は、CBDCやヘリコプターマネーに関係なく、懸念されることである。すべての中央銀行に固有の構造問題である。

しかし、この問題の本質を議論する経済学者はほとんどおらず、CBDCに関連してこの問題に取り組む中央銀行家はさらに少ない。決済システムの問題に対して、CBDCよりも民間による解決策を支持する中央銀行家は、もっとまれである。

CBDCの真実は、政府がその特権的地位を守り、人々のお金に対して、より強い支配力を行使しようとするものだ。

しかし、お金そのものは公共財ではない。お金の生産が政府によって日々侵食されているからといって、公共財になるわけではない。CBDCなるものが存在すること自体、民間市場で起こった決済の革新に負うところが大きい。

CBDCの真の危険は、もしお金が純粋に電子化され、政府によって直接提供されるなら、政府が人々に対してなしうる統制の程度に限界がなくなることだ。CBDCによって、すべての人の口座の入出金を連邦政府が完全に統制できるようになる。

政府の統制がここまでくると、経済的・政治的自由とは相容れない。

政府は民間のイノベーションと競争を支援することで、金融市場の利用を促し、金融サービスのイノベーションを確かにするべきだ。政府の独占と規制を減らし、個人向けCBDCの発行を見送るべきである。

(次より抄訳)
Central Bank Digital Currencies and Freedom Are Incompatible | Cato Institute [LINK]

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