2022-04-24

ウクライナにおけるロシアの核攻撃:その可能性は?

モスクワによるウクライナへの核攻撃の脅威はほぼゼロだが、NATOの無責任な行動が欧州への核の危険を増大させる可能性がある。

元国連大量破壊兵器査察官、スコット・リッター(2022.4.24)

バーンズCIA長官が最近、ウクライナ紛争を背景にロシアの核兵器の脅威について記者団の質問に答え、話題となった。「プーチン大統領とロシア指導部が自暴自棄になる可能性、さらにこれまでの戦局の停滞を踏まえると、戦術核もしくは低出力核兵器を使用する恐れがあることを軽視できない」と述べた。

西側諸国がロシアの核兵器情報に過剰反応するのは、ロシアがどのような状況で核兵器を使用する可能性があるのかについて、根深い理解不足があるためだ。2020年6月2日、ロシアは30年の歴史の中で初めて、核戦争対処方針を説明する文書「核抑止力に関する国家政策の基本原則」を一般公開した。

基本原則は、核以外の攻撃に対して核兵器で報復するシナリオを二つ示している。一つは、敵対国がロシアの重要な政府施設や軍事施設を攻撃し、その破壊によって核戦力の対応行動が損なわれる場合だ。もう一つは、国家の存立が危ぶまれる場合に、通常兵器を用いてロシアが侵略される場合である。

ラブロフ露外相がインドの報道機関に対する声明で指摘したように、ロシアの核兵器使用の基本原則で示されたどの条件も、現在のウクライナの状況には当てはまらない。

しかしウクライナ紛争が欧州で核戦争の可能性を高めないわけではない。プーチン大統領に安全保障を助言するメドベージェフ元大統領によると、もしスウェーデンかフィンランドがNATOに加盟すれば、「バルト海の非核化について語ることはもはや不可能になる。バランスを取り戻さなければならない」。

スウェーデンやフィンランドのNATO加盟論は、核兵器を搭載できるF-35A戦闘機の配備に向けた取り組みの後に出てきた。フィンランドは最近、F-35A戦闘機を60機購入する意向を表明したが、この動きはロシアにとって憂慮すべきものとしか言いようがない。

ラトビア、エストニア、リトアニアの上空で行われている「バルト海の航空警備」作戦を支援するために、米国と他のNATO空軍がF-35Aを多用していることは、ロシアにとって深刻な脅威とみなされている。

F-35A戦闘機推進派は、ロシアの基本原則が「核抑止力の実施によって無力化すべきシナリオ」の一つとして、「非核兵器国の領土への核兵器とその運搬手段の配備」を挙げていることを省みたほうがいいだろう。

ロシアはウクライナで核兵器を使用する準備はしていないかもしれない。しかし、NATOの無責任な態度は、ロシアの核兵器が欧州で使用される可能性を高める結果になりかねない。

(次より抄訳)
A Russian nuclear strike in Ukraine: How likely is it? — RT Russia & Former Soviet Union

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