2020-08-24

政府なき法

慣習法が社会に認められるのは、権力の後ろ盾があるからではなく、各個人が互いに相手の期待に沿って行動することが、利益になるからだ。政府が上から法を押しつけると、法が相互承認を通じボトムアップで発達する場合よりも、社会秩序を保つのにより多くの暴力が必要になる。
Bruce Benson, Enterprise of Law: Justice Without the State

慣習法の下では、権利の侵害は政府や「社会」に対する犯罪ではなく、民事上の不法行為として扱われる。ある人の行為が他者に影響を及ぼさない限り、法的な問題にはならない。明らかに誰にも害を及ぼさない行為は、法的責任の対象にはならない。
Bruce Benson, Enterprise of Law: Justice Without the State

政府の法律のない社会で揉めごとが起こっても、暴力で決着をつけることになるとは限らない。暴力は報復をもたらし、紛争解決の手段としてはコストが高い。だから慣習法制度の下では、暴力によらない調停や紛争解決手続きが急速に発達するだろう。
Bruce Benson, Enterprise of Law: Justice Without the State

慣習法の下での裁判結果は、共同体による追放の脅威によって執行される。原告側と被告側は正しい判決を拒んだ場合の高いコストを認識し、判決に服さない者を集団から追放する。訴訟による解決は、この厳しい制裁に対する恐れから、受け入れられるようになっていく。
Bruce Benson, Enterprise of Law: Justice Without the State

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