2018-11-26

著作権保護は正しいか

著作権が力を持たなければ、創造的な活動の活気は失われ、芸術家たちは貧しくなってしまう——。政府や業界団体はこう強調し、多くの人々もそう信じています。けれども、それは本当なのでしょうか。

文明の歴史からみれば、著作権が登場したのはごく最近のことです。芸術は文明の始まりまでさかのぼり、少なくとも三千年にわたり、どんな種類の著作権保護もそこにはありませんでした。それにもかかわらず、文学、美術、音楽などの作品がほとんどの社会で多数作られてきたのです。

著作権なしで、たとえば小説家はどうやって稼いだのでしょう。経済学者ボルドリンとレヴァインの共著『〈反〉知的独占』によれば、19世紀の米国では、合法的に売られている本を購入する代金以外、著者にまったく支払いせずに誰でも海外出版物を自由に再版できました。それでもディケンズら英国の作家たちは利益を手にします。

英国の作家たちは新作が自国で出版される前に、原稿を米国の出版社に売ったのです。原稿を買った米国の出版社は、良書をできるだけ早く求める読者の需要に応え、売り上げを伸ばすことができました。英国の作家たちが米国の出版社から前払いで受けた収入は、英国で何年もかけて稼ぐ印税を上回ることがしばしばあったといいます。

著作権保護を強く支持する米ディズニーのアニメ映画の多くは、「白雪姫」「眠れる森の美女」「アラビアンナイト」から、最近製作中止が発表された「ジャイガンティック」の元となった「ジャックと豆の木」に至るまで、著作権のないすぐれた昔話を素材とします。この事実自体、ボルドリンとレヴァイン両氏が指摘するとおり、著作権がなければすぐれた作品は生まれないという同社の主張が正しくないことを示しています。

日経電子版によれば、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)で著作権の保護期間が著作者の死後70年に延長され、しかも外務省はその事実をウェブサイトでひっそりと明らかにしただけでした。文化の発展を妨げかねない重大な決定が、国民の目を盗むように行われることに憤りと危うさを覚えます。(2017/11/26

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