2018-11-19

国家、このあいまいなるもの

私たちは普段、国家を非常に確かな存在と考えています。しかし世界にある風変わりな小国にまで視野を広げると、国家ほどあいまいで奇妙なものはないと思えてきます。

一般に国家が成立するための3要素は「領土、国民、主権」とされます。ところが十字軍時代のカトリック修道会を発祥とするマルタ騎士団は、領土がないのに100以上の国および欧州連合(EU)と外交関係を結び、国連にもオブザーバーとして参加しています。

高級ブランド店が軒を連ねるローマの通りのビルを本拠とし、イタリアに治外法権を認められています。カトリックの頂点に立つローマ法王率いるバチカンとも政治的には対等に渡り合います。

報道などでは、国家ではなく「主権実体」とされますが、国家との区別がよくわからない主権実体という概念を持ち出さざるをえないこと自体、国家というもののあいまいさを示しています。

マルタ騎士団とは対照的にきわめて浅い歴史ながら、劣らず興味深いのは、英国沖の公海上にあるシーランド公国です。今年9月2日、「建国」から50年を迎えました。

1967年、第二次世界大戦中に英軍が築いた人工島の海上要塞を、元英軍少佐で漁師のパディ・ロイ・ベーツが占拠。ロイ・ベーツ公を名乗って独立を宣言します。

2006年に火災が起こり、国土は壊滅状態となりますが、ロイ・ベーツ公夫妻が私財をなげうって再建します。他人の税金に頼ってばかりの他国の政治家は見習ってほしいものです。

ロイ・ベーツ公は2012年10月に91歳で死去。摂政を務めていたマイケル・ベーツ公太子が父の後を継ぎ、2代目シーランド公に即位しました。ハフポストの記事によると、シーランド公国は「ジョークということは全然なく、100%真剣」。いいですね。

地震で大西洋に没したとされる伝説の島、アトランティス。その名を付けた国を建国した人々がいました。1917年、デンマーク人のグループが戦乱の欧州を逃れて米フロリダ沖の群島に移住し、アトランティス公国を宣言します。

NIKKEI STYLEの記事によると、1930年代から1950年代にかけての米国務省の行政記録には、公国元首が同省に宛てて「いずれかの島または国内への不法侵入はすべて懲役刑に相当する犯罪にあたる」と警告を発した文書があるといいます。惜しいことに、今ではもうこの国はないようです。

11月16日の投稿「海上国家へようこそ」で書いたように、太平洋に人工島を浮かべ、新しい国を作る構想もあります。国家とは何か、考えさせられる機会が増えそうです。(2017/11/19

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