2017-04-13

岩崎育夫『入門 東南アジア近現代史』


政治統合より賢明な道

英国の欧州連合(EU)離脱に対し、「欧州で孤立する」「グローバル化に逆行」などという非難が主流メディアで広がっている。しかしそれは的外れだ。EUは政治統合であり、政治のグローバル化にすぎない。政治統合から抜け出しても経済的に孤立するわけではないし、政治のグローバル化は経済のグローバル化とは違う

ある地域の国々が経済的な結びつきを強め、経済のグローバル化を進めたいなら、EU型の政治統合よりも賢明な道がある。それが本書で解説される東南アジア諸国連合(ASEAN)のゆるやかな連携だ。以下、抜粋。(数字は位置ナンバー)

ASEANは、EUのように加盟国の義務や行動を細かく規定し、主権の一部が移譲された地域機構ではない。東南アジア研究者のあいだでは「ゆるやかな」地域機構と指摘されている。(2640)

内政不干渉は〔略〕ASEANの代名詞ともなっている〔略〕「憲法に反し民主主義に反する政府の交代を〔略〕黙認しない」と述べているが、実際には、ミャンマーとタイの非民主主義的な状況に対して、何の行動も採っていない。(2651)

決定が加盟国の全会一致、すなわち、同意(コンセンサス)を原則にしている〔略〕加盟国が合意できない分野、まとまることが難しい分野は、ひとまずわきに置いて、合意できる範囲内、まとまれる範囲内で協調・行動する〔略〕。 (2663)

イギリス国民の不満とEUの動揺という状況をみると、加盟国の主権と意向を尊重する「内政不干渉」や「全会一致方式」は〔略〕ASEANの組織と安定を維持するうえで有効な方式とみることも可能なのである。(2686)

一つが、EUのように、加盟国が最終的に一つの国になることをめざす国家統合、もう一つが、投資や貿易の自由化など経済分野で協力する経済共同体である。〔略〕東南アジア諸国の考えは〔略〕後者にあることは明らかである。(2781)

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