2016-12-26

不換紙幣という人工物

Frank Shostak, Why Are Dollar Bills Worth Anything?(ドル紙幣に価値がある理由)より抜粋。

自由な市場経済では、銀行が紙幣(paper certificates)を刷りすぎると購買力でみた価値が下がる。保有者は購買力を守るため紙幣を金に換えようとする。全員が同時にそうすれば、銀行は倒産する。だから金の裏付けのない紙幣の発行に歯止めがかかる。

しかし政府はこの歯止めを外すことができる。命令(decree)を出し、紙幣を金に換えなくてもよくするのだ。銀行はぼろ儲けのチャンスが広がり、紙幣をとめどなく刷ろうとする。物価高騰の恐れが強まり、市場経済を破壊しかねなくなる。

政府はこうした市場経済の崩壊を防ぐには、お金の供給量を管理しなければならない。銀行の過剰な紙幣発行に歯止めをかけ、連鎖倒産(bankrupting each other)を防ぐ。このため独占的な銀行(中央銀行)を設立し、紙幣量の拡大を管理する。

中央銀行は自らの権威を示すため、民間銀行の紙幣に代えて独自の紙幣を発行する。中央銀行券に購買力(purchasing power)が生まれるのは、歴史的に金の裏付けのある民間銀行券と固定レートで交換されるからだ。

俗説と異なり、ドル紙幣の価値は商品貨幣(金)との歴史的つながりから生まれた。政府の命令や社会の慣習からではない。現代の不換紙幣(fiat money)は市場経済から生まれたものではないし、生まれることもできない。

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