2016-03-29

『恐怖による支配』(1)


政治の目的

他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法が3月29日午前零時、施行された。政府は「万が一に備え国民の命や暮らしを守る万全の態勢を敷くには、平和安全法制は必要不可欠なもの」(岸田文雄外相)と強調する

問題は、果たして政府は「国民の命や暮らしを守る」組織として信頼できるかどうかである。たとえば政府は、公的年金の支給開始年齢を引き上げるという約束違反を繰り返している。しかし政府にいわせれば、支給開始年齢は国民と契約したものではない。だから反故にしても法的責任を問われない。

年金支給年齢すら守れないような政府が、「国民の命や暮らしを守る」ことができるとはとても思えない。同じ政府がやっている以上、公的年金保険料がグリーンピアに無駄遣いされる一方で、安全保障を名目とした予算だけはきちんと目的どおりに使用され、無駄遣いされないと考える合理的な理由はない。

政府は、老齢や病気に備えるには社会保障が欠かせないと宣伝してきた。同じように、「国民の命や暮らしを守る」ためには安全保障が必要だと、あらゆる手練手管を用いて国民に信じさせようとするだろう。H・L・メンケンがいうように、それが政治の目的だからである。

<抜粋>
臆病な人間は、荒海のような自由よりも穏やかな独裁を好む。(米大統領、ジェファーソン)
Timid men… prefer the calm of despotism to the tempestuous sea of liberty.

政治の目的とは、次々と果てしなく現れる怪物で大衆を怖がらせ、安全を求めさせることに尽きる。怪物のほとんどは張りぼてなのだが。(ジャーナリスト、H・L・メンケン)
The whole aim of practical politics is to keep the populace alarmed (and hence clamorous to be led to safety) by menacing it with an endless series of hobgoblins, most of them imaginary.

戦争は国家の健康である。(作家、ランドルフ・ボーン)
Throughout history, war has been a desirable tool for authoritarians. It is, in Randolph Bourne’s words, the “health of the state.”

国民に政治指導者を支持させるのはたやすい。君たちは攻撃されようとしていると告げる。平和主義者には愛国心がなく、国家を危険にさらしていると非難する。これだけでよい。(ナチスドイツの政治家・軍人、ゲーリング)
This was quickly dismissed by Göring: “Oh, that is all well and good, but, voice or no voice, the people can always be brought to the bidding of the leaders. That is easy. All you have to do is tell them they are being attacked and denounce the pacifists for lack of patriotism and exposing the country to danger. It works the same way in any country.”

政府の唯一の権力は、犯罪者を取り締まることだ。もし犯罪者が足りなければ、犯罪者を作る。なんでも罪にして、法を犯さずに暮らせないようにする。(作家、アイン・ランド)
All of this seems to fulfill a quote by Ayn Rand: There’s no way to rule innocent men. The only power government has is the power to crack down on criminals. Well, when there aren’t enough criminals, one makes them. One declares so many things to be a crime that it becomes impossible for men to live without breaking laws.

原著:Feardom: How Politicians Exploit Your Emotions and What You Can Do to Stop Them.

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